2009年01月03日

お金のチカラ

たくさんのお金を持つと、
人はカイジュウになる。

自分のちょっとした動きが、
風を起こし地を揺るがす。
人はその姿に驚き、怖がり、
そしてひれ伏す。

最初は、自分の変身に気づかない。
何か言ったり少し動いたりするだけで、
周りの人があわてふためくのを見て、
自分の力だと勘違いする。

誰かが道に横たわっている岩をどけようと、
必死になっているのを見て、
ひょいとどけてあげると、
その人のためになった気がして、いい気分になる。
そのうちに、いろんな人の前に転がっている岩を
先回りしてどけてあげては、満足に浸る。

本当は、それぞれの人が、苦しみながらも
自分でその岩をどける作業そのものが、
とても大切だったのに。

助けを拒否する人は、恩知らずだと、
怒り狂って、炎をはく。
自分の力が人を動かすのを見るのが、喜びとなる。
城を作り、中をごてごてと飾る。

そしてカイジュウの皮は、
どんどんと深く体に食い込んでいく。
人であったことすら、忘れていく。


ある日、カイジュウは、少女に出会う。
その無垢な美しさに心を奪われ、
顔を覗き込むと、
その少女の目に浮かぶ恐怖の向こうに、
醜いカイジュウの姿が映っていた。

カイジュウはそこで、はっとする。
これは本当の自分じゃない。
カイジュウじゃなくなれば、
少女はもう自分を怖がらない。

そう思ってカイジュウの皮を取ろうとするけれど、
黒い血が流れるだけで、どうやっても取れない。

その日カイジュウの夢に、
妖精が出てきて、こう伝えた。


今晩中にあなたの持っているものを全て捨てて、
オアシスに来なさい。
日の出とともにオアシスで水浴びすれば、
もとのあなたに戻るでしょう。



目を覚ましたカイジュウは、
「別に捨てなくたって、ばれやしない。
水浴びだけすればいいや」
と考えて、早速オアシスに向かった。

日の出の光の下、水浴びをする。
カイジュウの皮がとけていく。

大喜びをしたのもつかの間。
次の瞬間には、
今までよりもっと黒く厚く固い皮が
体を覆いつくした。
カイジュウはもっと巨大なカイジュウになった。

そこへ白い鳥が飛んできて、こうささやいた。
「君はまだ、カイジュウのままがいいみたいだよ」

鳥の声とともに、
少女のことも、人間に戻りたがったことも、
すべてカイジュウの記憶から消えた。


カイジュウは今もまだ、
大きな石のお城に住んでいる。
どしどしと地面を揺るがしながら、
叫び声で空気を切り裂きながら。
posted by まゆか at 00:30| Comment(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。